面倒見がよいのと甘やかすのは違う~子どもの自立心を育てる教育とは~[#51]

私たちは子どもたちを愛し、その成長を望むからこそ、できる限りのサポートをしたいと考えます。しかし、子どもへの愛情表現として行う「面倒見のよさ」と、子どもの成長を妨げてしまう「甘やかし」の境界線はどこにあるのでしょうか。この記事では、子どもの自立心を育むために、保護者や教育者が知っておくべき「面倒見のよさ」と「甘やかし」の違いについて考えていきます。

なぜ自立心が重要なのか

子どもが大人になるプロセスにおいて、自立心の育成は極めて重要です。自分で考え、決断し、行動する力は、将来社会で生きていく上で不可欠なスキルです。しかし、保護者や教師が常に先回りして問題を解決してしまったり、必要以上に手を差し伸べたりすると、子どもは自分で考える機会を奪われ、自立心が育ちにくくなります

良かれと思って行う過度な手助けが、実は子どもの成長を阻害している可能性があるのです。では、子どもの自立心を育む「面倒見のよさ」とは、具体的にどのようなものでしょうか。

面倒見がよいとは何か

「面倒見がよい」とは、子どもが自分で学び、成長できるように適切な環境を整え、必要な時にサポートすることです。子どもの可能性を信じ、時には少し背中を押し、時には見守る姿勢が大切です。子どもが困難に直面した時、すぐに解決策を提供するのではなく、子ども自身が解決策を見つける手助けをすることが、真の「面倒見のよさ」です。

甘やかしとは何か

一方、「甘やかし」とは、子どもが自分でできることまで代わりにやってしまったり、困難や失敗から過度に保護したりすることです。子どもが経験すべき挫折や葛藤を回避させることで、結果的に子どもの学びの機会を奪ってしまいます。短期的には子どもを喜ばせるかもしれませんが、長期的には自立心や問題解決能力の発達を妨げることになります。

面倒見のよさと甘やかしの具体例

ここからは、学校生活における「面倒見のよさ」と「甘やかし」の違いを5つの具体例で見ていきましょう。

例1:宿題への対応

甘やかしの例: 中学2年生の息子が数学の宿題で困っていると、親が「大変そうだね」と言いながら問題の解き方を教えるどころか、答えを書いてあげてしまう。あるいは「難しいからやらなくていいよ」と言って宿題を免除してしまう。結果として、子どもは自分で考える習慣がつかず、困難に直面するとすぐに他人に頼るようになる。

面倒見のよさの例: 同じ状況で、親は息子が何につまずいているのかを丁寧に聞き出し、「この部分はどう考えたらいいと思う?」と質問を投げかける。ヒントを出しながらも、最終的な解答は息子自身に考えさせる。必要であれば基本的な概念を説明するが、問題を解くプロセスは子ども自身に委ねる。このアプローチにより、子どもは粘り強く考える力と自信を身につけていく。

例2:忘れ物への対応

甘やかしの例: 小学4年生の娘が体育着を忘れたと学校から電話がかかってきた。親は仕事の途中でも急いで体育着を学校に届ける。これが繰り返されるうちに、娘は「忘れても親が何とかしてくれる」と考えるようになり、自分の持ち物に責任を持つ意識が育たない。

面倒見のよさの例: 同じ状況で、親は「今日は体育着がなくて大変だったね。どうしたの?」と子どもの話を聞き、「明日の準備は前日にしておくといいね。一緒にチェックリストを作ってみる?」と提案する。忘れ物の結果(体育の授業に参加できなかった不便さなど)を経験させることで、次からは自分で責任を持つきっかけにする。必要に応じて、準備の習慣づけを手伝う。

例3:人間関係のトラブル

甘やかしの例: 中学生の子どもがクラスメイトとトラブルになった際、親が学校に電話をかけ、担任や相手の親に直接文句を言う。子どもの立場だけを一方的に擁護し、「うちの子は悪くない」と主張する。子どもは自分で解決する機会を奪われ、コミュニケーション能力や対人関係スキルが育たない。

面倒見のよさの例: まず子どもの話をじっくり聞き、感情を受け止める。その上で「相手はどう感じていたと思う?」「どうしたら解決できそう?」などと問いかけ、子ども自身に考えさせる。必要に応じて解決策をアドバイスするが、基本的には子ども自身が相手と話し合うことを促す。深刻なケース(いじめなど)では介入するが、子どもの成長につながる形でサポートする。

例4:テスト勉強の支援

甘やかしの例: 高校生の息子の期末テストが近づいている。親が「あなたのためだから」と言って、テスト範囲の要点をまとめたノートを作り、暗記カードまで用意してあげる。さらに「しっかり勉強しなさい」と言いながらも、結局は親がテスト前夜まで付き添って教えてしまう。子どもは自分で計画を立てて勉強する習慣が身につかない。

面倒見のよさの例: テスト計画を一緒に考える時間を設け、「いつまでに何をするか」を子ども自身に決めさせる。分からない部分があれば質問に答えるが、基本的には自分で調べる習慣をつけさせる。また、効果的な勉強法(過去問を解く、要点をまとめるなど)をアドバイスするが、実際の作業は子どもに任せる。結果よりも努力のプロセスを褒め、テストの点数に一喜一憂せず、次につながる振り返りを促す。

例5:進路選択

甘やかしの例: 高校3年生の娘が進路に悩んでいる。親が「この大学がいいよ」「この学部が将来安定するよ」と自分の価値観で進路を決めつけ、志望校のパンフレットを集め、願書の記入まで手伝ってしまう。子どもの興味や適性よりも、親の希望や社会的評価を優先させている。

面倒見のよさの例: 娘の興味や強み、将来の夢について対話の時間を持つ。様々な選択肢について情報収集を促し、オープンキャンパスへの参加や卒業生との面談など、自分で調べる機会を提供する。「この道に進むとどんな未来が待っているか」など、長期的な視点で考えるための質問を投げかけ、最終的な決断は本人に委ねる。親はアドバイザーとしての役割に徹し、子どもの自己決定を尊重する。

自立心を育てる塾・教育機関の特徴

子どもの自立心を育てる優れた教育機関には、以下のような特徴があります:

  1. 子どもの「できる」を信じる姿勢:子どもが自分で考え、チャレンジすることを基本としている。
  2. 適切なサポートと見守りのバランス:必要なときには手を差し伸べるが、基本的には子どもの自主性を重んじる。
  3. 失敗を学びの機会とする文化:間違いや失敗を否定せず、そこから学ぶ姿勢を教える。
  4. 自己管理能力の育成:時間管理、課題の優先順位づけなど、学習に必要な自己管理スキルを教える。
  5. 問題解決能力の養成:答えを教えるのではなく、問題解決のプロセスを重視する。

面倒見のよさを実践するためのポイント

子どもの自立心を育むために、以下のポイントを心がけましょう:

  1. 子どもの力を信じる:子どもは想像以上にできることが多いものです。まずは信じて任せてみましょう。
  2. 失敗を恐れない環境をつくる:失敗は成長のための貴重な機会です。小さな失敗を経験させ、そこから学ぶ力を育てましょう。
  3. プロセスを褒める:結果だけでなく、努力や工夫、粘り強さなど、プロセスを具体的に認めましょう。
  4. 選択と責任を経験させる:年齢に応じた選択の機会を与え、その結果に責任を持つ経験をさせましょう。
  5. 対話を重視する:「どうしたらいいと思う?」「どんな方法がある?」など、子ども自身が考えるきっかけになる質問を投げかけましょう。

まとめ:本当の愛情表現とは

子どもを愛するからこそ、すべてを代わりにやってあげたい、困難から守ってあげたいと思うのは自然なことです。しかし、本当の愛情表現とは、子どもが自分の足で立ち、自分の力で歩いていけるよう支援することではないでしょうか。

面倒見のよさとは、子どもの自立を見据えた愛情表現です。子どもが困難に直面したとき、すぐに解決策を与えるのではなく、共に考え、時には見守る勇気を持ちましょう。その積み重ねが、やがて社会で自立して生きていける大人への成長につながります。

子どもの成長は一朝一夕で実現するものではありません。焦らず、長い目で見守り、適切なタイミングで必要なサポートを提供することが、親や教育者の重要な役割なのです。面倒見のよさと甘やかしの違いを理解し、子どもの自立心を育む教育を実践していきましょう。


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