成績が伸びる子は「幹」を学び、伸びない子は「枝葉」を覚える[#123]
「毎日ちゃんと問題を解いているのに、テストになると点が取れない」
「前にやった問題とほとんど同じはずなのに、少し聞き方が変わっただけで手が止まる」
こんな経験がある人は、けっこう多いと思います。がんばっているのに結果が出ないのは、本人もつらいし、見ている家の人ももどかしいですよね。
原因は、勉強の量が足りないことではなく、勉強の「向き」にあることが少なくありません。この記事では、その向きを「幹」と「枝葉」という言葉で整理してみます。
勉強には「幹」と「枝葉」がある
勉強の内容を、1本の木にたとえてみます。
- 幹:その分野の根っこにある考え方。「そもそも何が起きているのか」「なぜそうなるのか」という部分
- 枝葉:個別の問題、年号や用語、解き方のパターンなど。幹から広がった具体的な形
枝葉は数えきれないほどあります。問題集を何冊やっても、世の中の問題を全部カバーすることはできません。いっぽう幹は、思っているよりずっと少なくて、一度つかめば初めて見る問題にも使えます。
枝葉を1つずつ覚えていると、形が変わった瞬間に止まる
伸び悩んでいるときは、問題を1問ずつ「別のもの」として覚えていることがよくあります。
- 解き方や答えを暗記して、同じ問題なら解ける
- 解説を読んで「なるほど」と思うけれど、なぜその手順なのかは考えていない
- 問題集を1周終えることが目標になっている
これだと、見た目が少し変わっただけで「こんなの見たことない」となってしまいます。本当は同じ幹から出た枝なのに、別の植物に見えているような状態です。
具体例1:歴史(江戸幕府の終わり)
枝葉で勉強しているとき
年号と出来事を、一問一答で1つずつ覚えます。
- 1853年:ペリー来航
- 1858年:日米修好通商条約
- 1867年:大政奉還
「1858年は?」と聞かれれば答えられます。ところが「幕府が倒れた理由を説明しなさい」と聞かれると、急に書けなくなります。年号は覚えているのに、出来事どうしがつながっていないからです。
幹から理解しているとき
歴史の幹は、「出来事には原因と結果があり、つながっている」ということです。
外国の圧力で開国する → 不利な内容の条約を結ぶことになる → 貿易が始まって物価が上がり、人々の生活が苦しくなる → 幕府への不満が高まる → 幕府を倒そうとする動きが強まる
この流れが頭にあると、年号や用語は「流れの途中にある駅」として自然に位置づけられます。覚える作業も、つながりがあるぶん楽になります。
問題が変わったとき
たとえば、次のように聞き方が変わったとします。
- 「なぜ日米修好通商条約は、国内で批判されたのですか」
- 「開国は、人々の生活にどんな影響を与えましたか」
一問一答で覚えていると、どちらも初見の問題になります。流れをつかんでいれば、どちらも「あの流れの、この部分のことだ」と気づけます。
この考え方は、江戸時代以外にも使えます。「なぜ戦いが起きたのか」「なぜ政治の仕組みが変わったのか」と、原因と結果を考える習慣は、どの時代の勉強にも通用します。
具体例2:理科(季節が生まれるしくみ)
枝葉で勉強しているとき
季節に関する知識を、バラバラに暗記します。
- 夏は昼が長く、冬は短い
- 夏は太陽の南中高度が高い
- 夏は暑く、冬は寒い
- 北半球と南半球では季節が逆になる
覚えることが多いうえに、「南半球の12月の昼の長さは?」のように少しひねられると、混乱しやすくなります。
幹から理解しているとき
幹は、「地球は、地軸(自転の軸)が傾いたまま、太陽のまわりを回っている」という1つの事実です。
傾いているので、時期によって太陽の光が当たる角度と時間が変わります。さっきの4つの知識は、すべてここから説明できます。覚える項目が4つから1つになり、南半球の問題も「傾きの向きが逆になるだけ」と考えて解けます。
問題が変わったとき
次のような問題でも、幹があれば考えられます。
- 「もし地軸が傾いていなかったら、季節はどうなるか」→ 太陽の光の当たり方が1年中ほぼ同じなので、季節の変化はほとんどなくなる
- 「赤道の近くで季節の変化が小さいのはなぜか」→ 傾きがあっても、昼の長さや光の角度の変化が小さいから
ちなみに、「夏は太陽に近いから暑い」と考えてしまう人は少なくありません。でも、地球が太陽にいちばん近づくのは1月の初めごろです。丸暗記ではなく、しくみから考える習慣があると、こういう思い込みにも気づきやすくなります。
枝葉の問題を解くのは、むだではありません
ここまで読むと「問題を解くのは意味がないの?」と思うかもしれませんが、そんなことはありません。
幹は抽象的なので、頭の中で眺めているだけでは、なかなか理解できません。具体的な問題(枝葉)を解くことで、幹がだんだん見えてきます。反対に、幹だけをわかったつもりになっても、問題を解かなければ使いこなせません。
ポイントは、枝葉を解く目的です。「この問題を解けるようになるため」ではなく、「幹を理解するために、この問題を使う」と考えると、同じ問題でも得られるものが変わります。
幹を意識するための3つの習慣
特別な才能は必要ありません。問題を解いたあとの数分の使い方を変えるだけです。
- 「なぜそうなるのか」を自分の言葉で説明してみる
答えが合っていても、理由を一言で言えるか確認します。言えないときは、まだ幹に届いていないサインです。 - これまでに解いた問題との共通点を探す
「さっきの問題と、何が同じだろう?」と考えてみます。共通点が見つかったとき、それが幹です。 - わざと形を変えて考えてみる
「もし条件が1つ違ったら?」と変えてみます。変えても同じ考え方で答えが出せるなら、しっかり理解できています。
研究でも言われていること
「理由を考えながら学ぶと身につきやすい」ということは、学習の研究でも調べられています。たとえば、次のような報告があります。
- Chiらの研究(1989年、Cognitive Science)では、例題を読むときに自分で理由を説明しながら進めた学習者のほうが、あとの問題解決でよい成績を出したと報告されています。
- Dunloskyらの論文(2013年、Psychological Science in the Public Interest)は、10種類の学習法の効果を整理したものです。この中で、自分に「なぜ?」と問いかける方法や、理由を説明しながら学ぶ方法は、中程度の効果があるとされています。
どちらも、「解きっぱなしにせず、理由を考える」ことの助けになる内容です。ただし、研究の対象や条件はそれぞれ違うので、「これをやれば必ず伸びる」という話ではなく、勉強のヒントとして受け取るのがよいと思います。
まとめ
- 問題を大量に解いても、枝葉を1つずつ覚えているだけだと、形が変わったときに対応しにくい
- 枝葉は無数にあるが、幹は少なく、つかめば初めての問題にも使える
- 枝葉の問題は、幹を理解するための材料として使うと効果が上がる
- 解いたあとに「なぜ?」と「共通点は?」を考えるだけで、勉強の質が変わっていく
「たくさん解いているのに伸びない」と感じたときは、勉強時間を増やす前に、いま解いている問題の幹は何だろう、と考えてみてください。
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