「まだ小学生だから大丈夫」——その安心感が英語嫌いを生んでいるかも⁉[#111]
「小学校で英語をやっていたはずなのに、中学に入ったら急に苦手になってしまった」――そんな声が、ここ数年で本当に増えています。実はこの問題、お子さんの努力不足でも才能の問題でもなく、今の英語教育が抱える構造的なギャップに原因があります。
新課程になってもなお、中学で英語嫌いになる子は多い
「うちの子だけかな」と思いがちですが、新学習指導要領が始まった後のデータを見ても、この問題は変わっていないことが分かります。
- 「英語の勉強は好きか」に肯定的に回答した割合:小学生 69.2% → 中学生 52.3%
- 小学生と中学生の差:16.9ポイントの開き
※全国の中学3年生 約107万人を対象とした調査(2023年4月実施・7月公表)
新課程になり、小学校での英語教育が強化されても、中学に入ると「英語が好き」と感じる子が大きく減るという傾向は変わっていません。
さらに、どの教科が「嫌い」かという別の調査でも英語の名前が挙がっています。
- 中学生の「一番嫌いな教科」:1位 数学(22.2%)、2位 英語(16.7%)
- 男子に限ると:「一番嫌いな教科」1位が英語(22%)
※全国の中学生を持つ保護者600名を対象とした調査(2023年10月〜11月実施)
数学と並んで、英語は中学生が「嫌いになりやすい教科」の筆頭です。そして英語嫌いになる原因で最も多い回答は、「授業が理解できなくてついていけない」こと。英語そのものへの拒否感ではなく、授業についていけなくなることがきっかけになっているのです。
2021年から中学英語の「前提」が変わった
2021年度から、中学校の学習指導要領が大きく改訂されました。この変更が「中1英語の難しさ」に深く関わっています。
- 中学で習う英単語:約1,200語
- ゼロからスタートする設計
- be動詞の過去形などは中2で学習
- 中1のcanは後半で登場
- 現在完了進行形・仮定法は高校で学習
- 中学で習う英単語:約1,600〜1,800語
(小学校分と合わせると最大約2,500語) - 小学校で基礎を習得済みという前提で進む
- be動詞の過去形・過去進行形が中1に前倒し
- be動詞・一般動詞・canが中1の最初から同時に登場
- 現在完了進行形・仮定法が中学内容に追加
中1教科書の文章量も約2倍に増えています(Lesson 1 だけで比較しても、旧課程の12文から25文へ)。
新しい中学英語は「小学校で基礎的な英語力が身についていること」を前提に授業が進む設計になっています。準備なしでスタートすると、最初から大きなビハインドを抱えることになります。
小学校の英語は「慣れる」ための学習——「使いこなす」とは別物
小学校では、英語に楽しく慣れることが中心です。英語を口に出すことへの抵抗感が少なくなったり、発音を恥ずかしがらなくなったりする良い面があります。
しかし中学校に入ると、求められることが一変します。
- 聞いて大まかに理解できる
- 会話表現を真似して話せる
- 英語へのポジティブな印象
- 正確に書く・スペルミスは減点
- テストで解く・筆記で正答を出す
- 文法のルールを理解して使い分ける
たとえば、中1の早い段階で次の3種類の文が一気に登場します。
- be動詞 → Are you a student? / You are not 〜.
- 一般動詞 → Do you play tennis? / I don’t like 〜.
- can → Can you swim? / I can’t 〜.
「なんとなく聞いたことはある」という状態では、Are you play tennis? や Do you can swim? のようなミスが頻発します。これは努力不足ではなく、それぞれのルールが整理されていないまま中学英語が始まってしまうことが原因です。
「英語嫌い」は一度こじれると、取り戻しに時間がかかる
子どもは「分かる」と感じると前向きになります。逆に「分からない」が続くと、一気に苦手意識が強まります。
- 授業の内容がよく分からない
- テストで点が取れない
- 「自分は英語が苦手なんだ」という意識が固まる
- 授業中も集中できなくなる
- さらに分からなくなる……(悪循環)
この悪循環は、中学1年のうちという早い段階から始まりやすいことが分かっています。そして一度「英語嫌い」という意識が定着すると、取り戻すのに相当な時間と労力が必要になります。
小学校入学前に「ひらがな練習」をしたように
お子さんが小学校に入る前、多くのご家庭でこんな準備をされていたと思います。
- ひらがなを読む・書く練習をした
- 名前を書けるようにした
- 1から10まで数えられるようにした
あれと同じことが、今は「中学入学前の英語」でも必要な時代になっています。
実際に中1英語を順調に乗り越えている子には共通点があります。入学前に塾や家庭学習で英語の土台に触れていた、というケースがほとんどです。新課程の中学英語は「小学校で基礎を習得済み」という前提設計になっているため、学校の授業だけで理解しながら追いついていくことがかなり難しくなっています。
- アルファベットの読み書き(大文字・小文字。書き順も含めてしっかりと)
- 基本的な英単語の読み書き(数十〜100語程度。読めるだけでなく書けること)
- be動詞と一般動詞の違い(「I am」と「I play」はなぜ違うのか)
- 疑問文・否定文の基本的な作り方(Are / Do / Can の使い分け)
特別な才能は必要ありません。「まだ小学生だから中学に入ってから頑張ればいい」という考え方が、実は最もリスクの高いタイミングになってしまっています。
「分かる状態」で中学英語をスタートできるかどうか——ただそれだけのことが、英語を好きなまま伸ばせるかを大きく左右します。小学校のうちに、家庭学習で少しずつ英語の土台を作っておくこと。それが今の時代、英語嫌いを防ぐための最大の予防策です。
まとめ
- 2023年度全国学力テストでも、小学生と比べ中学生の「英語が好き」という割合は16.9ポイント低い(文部科学省)
- 中学生の「一番嫌いな教科」で英語は2位(男子では1位)(学研教育総合研究所・2023年調査)
- 2021年の学習指導要領改訂で、中学英語は「小学校で英語の基礎を習得済み」という前提で進む設計に変わった
- 英単語数は最大約2,500語(小学校分含む)に増加、文章量も約2倍に
- 小学校英語の「慣れる」学習と、中学英語の「書く・文法を理解する」は求められることが異なる
- 英語嫌いを防ぐには、中学入学前に家庭学習でアルファベット・基本単語の読み書きと文法の基礎を身につけておくことが鍵
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