「おとといの夕飯、覚えてる?」―その質問に意味はあるの?[#57]

「おとといの夕飯、何食べたっけ?」
突然そう聞かれて、「うーん……覚えてないかも」と答える人、多いですよね。

でも、そこで「覚えていないなんて、記憶力が悪いんじゃない?」とか、「集中力が足りない証拠だよ!」なんて話になると……なんだか変だと思いませんか?
今回は、「忘れる」ことにどんな意味があるのか、そして「覚えておきたいことを忘れないためにはどうすればいいのか」について、科学的な視点からわかりやすくお話ししていきます。


忘れることは「ダメなこと」なのか?

結論から言うと、忘れることは脳にとってとても大切な働きの一つです。

私たちの脳は、毎日ものすごい量の情報を受け取っています。
そのすべてを覚えていたら、逆に大変なことになります。たとえば、

  • 昨日読んだ漫画のページ数すべて
  • 通学路で見かけた人の服の色すべて
  • 朝ごはんのごはんの粒の数(笑)

こんなことをいちいち全部覚えていたら、必要なことを思い出すときにノイズ(雑音)が多すぎて困ってしまいます。

実際、カナダのトロント大学の研究(Blake Richardsら, 2017)では、「脳は必要のない情報をあえて忘れることで、より柔軟に物事を判断できるようにしている」ということが示されています。

つまり、「おとといの夕飯を思い出せない」のは、脳がうまく働いている証拠でもあるのです!


なぜ「おとといの夕飯」なんて質問をするのか?

よくある話法として、最初に「どうでもよさそうなことを思い出せますか?」と聞いてから、「だからあなたの脳は衰えている」とか「集中力が足りないから成績が上がらない」と結論づける人がいます。

でもこれは、ちょっとズルい方法です。
「人間はどうでもいいことは忘れるようにできている」という事実を知っていれば、そんな誘導にのる必要はありません。

むしろ、「何を忘れてもいいのか」「何を覚えておくべきか」を自分で判断できるようになるほうが、よっぽど大事です。


では、「覚えておきたいこと」はどうすれば忘れない?

さて、「テストに出る内容」「友達との大切な約束」「大事なスピーチのセリフ」など、本当に覚えておきたいことってありますよね。
そういった記憶を長く残すためにはどうすればいいのか?

ここからは、学生のみなさんに向けて、実践的なアドバイスをお伝えします。


1. 「繰り返し」は最強の武器

人間の脳は、「何度も使った情報は重要だ」と判断します。
つまり、1回だけ見た内容よりも、何度も復習した内容の方が記憶に残りやすいのです。

これを「分散学習」と言います。たとえば、

  • 月曜日:英単語10個を覚える
  • 火曜日:同じ10個+新しい10個
  • 水曜日:また同じ10個+さらに10個

というふうに、何度も登場させることで「長期記憶」に入りやすくなります。


2. 寝る前の5分がゴールデンタイム

脳は、寝ている間にその日に入ってきた情報を整理し、必要なものを記憶に保存しています。
この性質を使って、寝る直前に覚えたい内容を確認するのがとても効果的!

英単語、歴史の年号、数学の公式など、軽く眺めるだけでもOK。
「一夜漬け」とは違って、毎晩ちょっとずつ続けるのがポイントです。


3. 人に話すと記憶が定着する

「インプット(覚える)」だけでなく、「アウトプット(使う)」も大事。
覚えたことを、

  • 友達に説明してみる
  • ノートにまとめてみる
  • 自分にクイズを出してみる

こういった行動をすることで、「思い出す力」も一緒に鍛えられます
これができると、テスト本番で「あれなんだっけ?」という事態を減らせます。


4. 「感情」と結びつけよう

心理学の研究では、「感情が動いたときの記憶は残りやすい」と言われています。
たとえば、楽しかった旅行の出来事や、感動した映画のセリフってよく覚えていませんか?

勉強も、「へぇ!そうなんだ!」と思えた瞬間を大切にしましょう。

  • 歴史の人物に共感してみる
  • 数学の解法に「なるほど!」と感動してみる
  • 英語の例文を自分の日常に置きかえてみる

そんなふうに「気持ち」を動かすことで、記憶はグッと定着します。


最後に:忘れることを悪く言わないで

「おとといの夕飯が思い出せない」というのは、あなたの脳がちゃんと「いらない情報を整理している」からです。
そんな脳を、「ダメだな」と思わないでください。むしろ、「うまくできてるな」とほめてあげましょう。

そして、覚えておきたいことは、コツコツと、楽しく、繰り返し学んでいくことが大切。
必要なものは忘れにくくなるし、必要ないものは上手に手放せる。そんな柔軟な記憶力を育てていきましょう!


参考文献・関連情報

  • Richards, B. A., & Frankland, P. W. (2017). The persistence and transience of memory. Neuron, 94(6), 1071–1084.
  • ウェルチマンらの記憶研究など、記憶の定着に関する心理学研究全般


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