『やる気が出たら勉強する』は一生始まらない理由[#116]

今回のブログの内容は、実は私自身がある生徒から教わった「勉強への向き合い方」についてです。
ある生徒が、1つ上の先輩に「やる気が出ないときはどうしてる?」と聞いたときの答えです。
普段からきちんと勉強している子でも、「今日はなんかだるいな……でもやらなきゃ……でもやる気が出ない……」となる瞬間があり、そんなときにどう乗り越えているのか知りたかったようです。
当時、私は生徒たちに「やる気が出ないときは、思い切って遊ぶ。そのかわり、遊んだあとはガンバるって決めておく」と伝えていました。しかし、その先輩の生徒のアドバイスを聞いたとき、私は「なるほど、そんな考え方があるのか」と目から鱗が落ちる思いでした。それ以来、この考え方を子どもたちに伝えるようになりました。
色々と調べてみると、これは脳科学的にも理にかなっているようです。

「宿題やったの?」と聞くたびにイライラしていませんか

夏休みに入ったのに、宿題がなかなか進まない。

「早くやりなさい」
「受験生なんだから勉強しなさい」
そう何度言っても、子どもはスマホを見たり、ゴロゴロしたり……。

ここまでくると、つい「うちの子はやる気がないのかな」と思ってしまう保護者の方も多いのではないでしょうか。

でも実は、この「やる気が出ないから始められない」という順番そのものが、脳の仕組みからするとちょっと違っているんです。

①「やる気が出たら始める」は、脳の仕組みと逆

多くの人は、こんなふうにイメージしていると思います。

やる気が出る → 勉強を始める

ところが、心理学の世界ではこの順番が逆だと言われています。

勉強を始める → やる気が出る

これは「作業興奮」と呼ばれる現象で、ドイツの心理学者クレペリンの研究をきっかけに知られるようになった考え方です(※誰が最初に言い出したのかについては諸説あり、はっきりしない部分もあるようです)。実際にやってみると分かりますが、「気が乗らないな」と思いながら手をつけたことでも、しばらく続けているうちに集中してきた、という経験は誰にでもあるはずです。

つまり、やる気は「待つもの」ではなく、「始めた後についてくるもの」というわけです。

②なぜ、始めるだけで集中できるようになるの?

難しい脳科学の話は抜きにして、ざっくり説明するとこんな流れです。

  • とりあえず作業を始める
  • 手や体を動かすことで脳が刺激される
  • 脳の中の「やる気に関わる部分」が働き出す
  • 気づいたら集中して続けられている

これは勉強に限った話ではありません。

「掃除するの面倒だな」と思いながら始めたら、気づけば部屋の隅々まで片付けていた。
「今日は走りたくないな」と思いながら家を出たら、意外と最後まで気持ちよく走れた。
「この仕事、気が重いな」と思いながらパソコンを開いたら、いつの間にか集中していた。

こういう経験、心当たりがある方も多いのではないでしょうか。勉強もまったく同じ仕組みで動いています。

③「やる気あるの?」という声かけが逆効果になる理由

ここまで読んでいただくと分かる通り、「やる気あるの?」「いつになったらやる気出すの?」という声かけは、実はかなり厳しい要求になっています。

たとえるなら、

「泳げるようになったらプールに入りなさい」

と言っているようなものです。

プールに入らなければ泳げるようにはならないのに、先に「泳げること」を求められている。子どもからすると、これはかなり理不尽に感じられるはずです。

「やる気が出ない」のではなく、「始められないから、やる気が出るきっかけがない」だけ、ということも少なくありません。

やる気が出るのを待つより、始める方が近道

④作業興奮をうまく利用するコツ

コツは、とにかく「始めるハードル」を思いきり下げることです。

  • 最初から全部やろうとせず、5分だけやってみる
  • 一番簡単な問題や、好きな教科から始める
  • とりあえず教科書とノートを開くだけでもOKにする
  • 机に座るだけでも、今日は「成功」とする

「よし、2時間勉強するぞ」と気合を入れるより、「とりあえず1問だけ」くらいの軽さで始めた方が、結果的に長く続けられることがよくあります。脳が動き出すきっかけさえ作ってしまえば、あとは自然と乗ってくるからです。

⑤親としてできる、ちょっとした声かけの工夫

ここが一番お伝えしたいところです。声かけを少し変えるだけで、子どもの動き出しやすさはかなり変わります。

「今日は何時間勉強したの?」ではなく、「5分だけやってみようか」
「全部終わらせなさい」ではなく、「まず1ページだけ」
「まだやってないの?」ではなく、「始めるだけならできそう?」

どれも、子どもに求めるハードルを一段階下げているだけです。でも、この「一段階下げる」が、子どもにとっては始めるか始めないかの分かれ目になります。

⑥受験生ほど、この考え方が大切になる

夏休みは、宿題だけでなく、受験勉強・苦手科目の克服・これまでの復習など、やるべきことが一気に増える時期です。

「やることが多すぎる」と感じるほど、人は動き出しにくくなります。全部を一度に考えてしまうと、それだけで気持ちが重くなってしまうからです。

だからこそ受験生こそ、「今日やることを全部終わらせる」よりも先に、「まず1つだけ手をつける」ことを大切にしてほしいと思います。

やることが多い受験生ほど、まず1つだけ手をつける

まとめ:子どもは、決して怠けたいわけではありません

「やる気がないから始められない」のではなく、「始められないから、やる気が出るきっかけがない」ということも、実はよくあります。

この夏休みは、「もっと頑張りなさい」と励ますよりも、「5分だけやってみようか」と、始めるハードルを少しだけ下げて背中を押してあげる。そのほうが、結果として大きな一歩につながることがあります。


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