同じ勉強量でも、同じ塾でも、結果が変わるのはなぜ?[#126]

大人になると、経験を積んだぶん、いろいろな場面で「こうしたほうがいい」と判断できるようになります。その一方で、自分の経験とちがうものを見ると、「それはどうなんだろう」と思ってしまうこともあります。

子どもの頃は、知らないことが多いぶん、何でも吸収できます。ときには失敗したり、だまされたりもしますが、それも考えを広げる経験になっていたかもしれません。大人になると判断は正確になる反面、自分の経験や、世の中で言われていることに頼りすぎて、考えが固まりやすくなるところがあります。

これは、子どもの勉強への関わり方でも起こりやすいことです。そして、その「固まり方」には、大きく3つのパターンがあるように思います。

同じやり方でも、子どもの受け取り方で結果が変わる

パターン1:自分が子どもの頃と同じやり方をする

「自分はもっと勉強していた」「自分の頃はもっと点数が取れた」という経験をもとに、同じくらいの勉強量をお子さんに求めるケースです。

お子さんは、はじめは素直に聞き入れることが多いです。ただ、学校で周りの子を見ると、自分のほうが多く勉強していると気づく場面が出てきます。そのときの受け取り方は、たいてい2つに分かれます。

  • 「なんで自分ばっかりやらなきゃいけないんだろう」と感じる子
  • 「自分はまわりより頑張れている」と少し誇らしく感じる子

同じ勉強量でも、前者は「やらされている勉強」に、後者は「もっと伸びたい」という前向きな勉強になります。勉強量そのものよりも、その量をお子さんがどう受け取っているかで、結果は大きく変わります。

パターン2:今の時代に合わせて、子どもの興味を優先する

最近は、「親の子どもの頃と比べてはいけない」「今の時代に合った接し方をしたほうがいい」という情報を、学校、塾、保護者どうしの話、ネットなどでよく見かけます。真剣に考えている保護者の方ほど、気にされているかもしれません。

もちろん大切な視点です。ただ、表面的な情報だけを取り入れると、「どう関わればいいのか」という軸がないまま、手探りになってしまうことがあります。その結果、勉強は学校におまかせ、という形になることもあります。

ここでも、同じ「子どもがやりたいことを大切にする」でも、結果が分かれます。

  • 今やっている勉強が、自分の好きなことや将来につながっていると知っている子は、目の前の勉強が好きなことではなくても、頑張りやすい
  • 勉強が好きではない子は、やりたいことを優先するうちに勉強から離れ、学校の授業が分からなくなっていく

たとえば、宇宙が好きな子が「この計算も、ロケットの軌道を考えるときに使うんだ」と知っていれば、地味な計算練習にも意味を感じられます。一方で、最低限の土台が抜けたまま進むと、進学のときに選べる道が少なくなってしまうこともあります。

ここで伝えたいのは、「勉強ができることがえらい」ということではありません。最低限の学力は、将来の選択肢を守るためのもの、ということです。

パターン3:みんなが通っているから、という理由で塾を選ぶ

塾選びも、同じことが言えます。周りの子が通っているから、評判がいいから、という理由で選んだ塾が、そのお子さんに合っているとは限りません。

塾に通っているのに成績が変わらないとき、その意味は2つに分かれます。

  • 良いケース:塾に通っているから、今の成績をキープできている
  • 気をつけたいケース:通っても、やめても、おそらく変わらない。時間とお金だけが使われている

この違いも、お子さん自身がどう感じているか、塾の先生がその子の先のことまで見て関わっているか、で決まってきます。

同じ勉強量でも、同じ塾でも、結果が変わるのはなぜ?のイメージ

分かれ目は「やり方」ではなく「反応を見ているか」

3つのパターンに共通しているのは、どのやり方にも、合う子と合わない子がいるということです。

昔のやり方が正解とは限りませんし、今風のやり方が正解とも限りません。人気の教育法や評判のいい塾が、そのままお子さんに合うとも限りません。分かれ目になるのは、お子さんの反応を見て、声かけややり方を調整できているかです。

補足:教育心理学には「自己決定理論」という考え方があります(デシとライアンの研究が有名です)。同じ行動でも、「やらされている」と感じるか、「自分で選んでいる」と感じるかで、やる気の質や続きやすさが変わる、というものです。

パターン1の「なんで自分ばっかり」と「自分は頑張れている」の違いは、この考え方で説明しやすいところがあります。ただ、これはあくまで考え方のひとつで、すべての家庭にそのまま当てはまるものではありません。

お子さんの反応を見るときの3つの視点

「反応を見る」と言われても、何を見ればいいのか迷うかもしれません。目安になりそうなものを3つ挙げます。

  1. 勉強についての発言の変化
    「どうせ」「なんで自分だけ」といった言葉が増えていないか。「ここ分かった」「次はこうしてみる」といった言葉が出てきているか。
  2. 学校の授業の理解度
    授業が分からないと感じる教科が増えていないか。小テストや提出物の状況はどうか。
  3. 今の勉強と、好きなことや将来とのつながり
    「これ、何の役に立つの?」と聞かれたときに、一緒に答えを探せるか。

塾に通っている場合は、お子さんの将来の姿を先生がどう考えているかを、一度聞いてみてもいいと思います。半年以上通っているのに、その子のことを話してもらえない、変化の理由も説明してもらえないようなら、塾に相談してみるのもひとつの方法です。惰性で通っている状態になっていないか、確かめるきっかけにもなります。

お子さんの反応を見るときの3つの視点のイメージ

固まらずに、見直し続ける

大人は経験があるぶん、どうしても「自分の正しさ」や「世の中の正しさ」に寄りかかりやすくなります。ただ、世の中の考え方が変わることもありますし、世の中のほうが違う方向に進んでいることもあって、どちらが正しいかは、すぐには分かりません。

だからこそ、昔のやり方でも、今風のやり方でも、いちばんの手がかりはお子さん本人の反応だと思っています。うまくいっているなら続ける。合っていなさそうなら、少し変えてみる。その繰り返しが、お子さんの可能性を狭めずに進んでいくための、いちばん確かな方法なのではないでしょうか。


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