■気になるニュース 120年に1度しか咲かない!スズタケという植物の秘密〔号外001〕
120年に1度しか咲かない!
スズタケという植物の秘密
2026年、長野県で今まさに起きている奇跡のはなし / 中学1年生の「植物」単元とつなげて読もう
突然だけど、みんなは「120年に1度しか花を咲かせない植物」がいることを知っていた?
その名はスズタケ(篠竹)。今年2026年、長野県でこの植物がついに花を咲かせている。これって、ものすごいことなんだ!
一斉開花
最大の高さ
開花記録
① スズタケってどんな植物?
スズタケは、日本の山や森に自生するササの一種。竹に似ているけど、直径は1センチにも満たない細い茎が特徴だ。高さは最大2.5メートルほどまで育つ。
昔からかごやざるなどの竹細工の材料として重宝されてきたし、飢饉(食べ物がなくなること)のときには実が食べ物として使われた記録もある。そのため古文書(昔の記録)に残っていることがあり、「120年ごとに花が咲く」ということが分かってきた。
② 理科で習う植物の基本とつなげて考えよう
中学1年の理科では植物のしくみを学ぶよね。スズタケはその知識とバッチリつながる植物なんだ。まずは基本用語を確認しながら読んでみよう。
スズタケの分類と体のつくり
植物は「種子植物」と「胞子植物(シダ・コケなど)」に大きく分かれる。スズタケは種子植物の中の被子植物(ひしょくぶつ)。さらに単子葉類(たんしようるい)に分類される。
単子葉類の特徴として、葉脈が平行脈(へいこうみゃく)になっていること、根がひげ根であることが挙げられる。スズタケもこの特徴を持っている。
| 用語 | 意味・スズタケとの関係 |
|---|---|
| 被子植物 | 種子が果実に包まれている植物のこと。スズタケもこのグループ |
| 単子葉類 | 芽生えのとき葉が1枚(子葉が1枚)。イネ・トウモロコシと同じ仲間 |
| 平行脈 | 葉脈が平行に走る。スズタケの葉を観察すると確認できる |
| ひげ根 | 細い根がたくさん広がるタイプ。地下茎(ちかけい)と組み合わさって広い範囲に広がる |
| 地下茎(ちかけい) | 土の中を横に伸びる茎のこと。スズタケはこれで広い範囲に広がって群落(グループ)を作る |
花のつくりとスズタケの花
理科で「花のつくり」を学ぶと、花びら・がく・おしべ・めしべが出てくる。でもスズタケ(イネ科)の花は花びらがない。イネの花と同じように、風によって花粉を運ぶ風媒花(ふうばいか)だからだ。
虫を引き付ける必要がないから花びらが発達せず、代わりにおしべが長く垂れ下がって風で花粉を飛ばしやすい形になっている。今年の開花では濃い紫色の穂(ほ)が確認されていて、これがスズタケの「花序(かじょ)」にあたる部分だ。
種子で増える?地下茎で増える?── 有性生殖と無性生殖
植物の増え方には①種子で増える(有性生殖)と②体の一部で増える(無性生殖・栄養生殖)の2種類がある。
スズタケは普段、地下茎を伸ばして横に広がる(無性生殖)方法で増えている。だから、ある山の斜面に生えているスズタケは実はほぼ「同じ個体」がつながっている場合が多い。
そして、120年に一度だけ花を咲かせて種子を作る(有性生殖)。この種子によって、新しい遺伝子の組み合わせが生まれる。これが次世代のスズタケになる。
③ なぜ120年に1度なの?
ここがスズタケ最大のナゾ。なぜそんな長い周期で一斉に咲くんだろう?
Qなぜ「一斉に」咲くの?
地下茎でつながった個体が同じタイミングで咲くことに加え、離れた場所のスズタケも同時期に咲く。「捕食者飽和仮説」という考え方が有力で、一斉に大量に咲くことで種子を食べるネズミや昆虫が食べきれないようにしている作戦とみられる。
Q120年という時間をどうやって数えているの?
これが最大の謎。植物の細胞の中に「分子時計」のような仕組みがあると考えられているが、詳しいメカニズムは❓ 未解明。専門家も「何かの方法で120年を数えているはず」と言っている。
Q花が咲いた後はどうなるの?
花を咲かせた後、スズタケの株は枯れてしまう(一回繁殖性)。でも種を落として次の世代へ続く。実生(みしょう・芽生えたばかりの若い株)の成長は非常に遅く、5年後でも高さ10cmほどにしかならないため、元の状態に戻るには数十年かかる。
Q前回はいつ咲いたの?
上伊那地域北部などでは1906年(明治39年)に開花の記録が残っている。それからちょうど約120年が経過した今年2026年に、また花を咲かせている。
研究者が考える「2つの仮説」
普段は花を咲かせず、種を食べるネズミや昆虫(捕食者)の数を抑えておく。そして一斉に大量の種を出すことで、捕食者が食べきれない量にし、多くの種子を次世代に残す作戦。
一斉に枯れることで林床(森の地面)に光が差し込み、次世代の実生(芽生え)が育ちやすい環境を一時的に作り出すという考え方。他の植物との競争を有利に進める戦略とも言える。
④ 今まさに研究が進んでいる
この一斉開花を調べるため、森林総合研究所(京都)の研究者・小林慧人さんが今年、長野県に調査に来ている。4月30日に伊那市の信州大学「手良沢山演習林」を調べたところ、スズタケ全体に濃い紫色の長さ10センチほどの穂が出ていることを確認した。
森林総合研究所の研究では、一斉開花年と咲き遅れ年(翌年に少数が咲く年)を比べることで、花を食べる昆虫の出現率や種子が残る割合(結実率)を調べた。理科で習う「条件を変えた比較実験」と同じ考え方だね。
結果、一斉開花年は咲き遅れ年よりも花を食べる昆虫の出現頻度が低く、種子が多く残りやすいことが分かってきた。これが「捕食者飽和仮説」の根拠の一つになっている。
⑤ スズタケの謎をまとめてみよう
| 疑問 | 現在の状況 |
|---|---|
| なぜ一斉に咲くの? | 仮説あり 捕食者飽和仮説が有力だが完全には証明されていない |
| なぜ120年という周期なの? | 未解明 研究者もわかっていない最大のミステリー |
| どうやって時間を数えているの? | 未解明 細胞内の「分子時計」の存在が推測されるが証明なし |
| 子孫はちゃんと残せるの? | 条件次第 種子ができることもあれば少ない年もある。実生の成長は非常に遅い |
| スズタケはイネ科の植物? | 確認済み イネ科タケ亜科に属する単子葉植物 |
⑥ 考えてみよう
🧠 理科の視点で考えてみよう!
- スズタケが「地下茎で増える(無性生殖)」と「種子で増える(有性生殖)」の両方を使うのはなぜだと思う?それぞれのメリット・デメリットは何だろう?
- イネ科の花が「花びらなし・風媒花」なのに、どうやって受粉するのかな?
- 「捕食者飽和仮説」はどうやって証明できるだろう?もし君が研究者なら、どんな実験を考える?
- 120年に1度しか種子を作らないのに、スズタケが絶滅せずに生き続けているのはなぜだと思う?
120年前に咲いたとき、日本はまだ明治時代。
スズタケはその時からずっと、静かに山の中で生き続けてきた。
そしてまた今年、花を咲かせている。
理科で学んだ「植物のしくみ」って、
教科書の中だけじゃなくて、今も山の中で動いているんだ。
自然の「時計」って、すごいと思わない? 🌿

